──では、ここまで話したこと以外で言いたいことというか、語っておきたいことはありますか?
語っておきたいこと……あっ。ありますね。セリフがオシャレって言いましたけど「いまの男の子は、とにかく脆(もろ)い」という話を、授業や講演会でしてるんです。
──なるほど。
続けて「軟弱! 脆弱! 虚弱!」と言う。これね、言葉を三つ重ねる僕のクセなんですけど、じつは北斗の拳から学んだことなんですよ。
──おお! それは「退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ!」。サウザーの!!
そうです。あと、ラオウが言った「砕けぬ! 折れぬ! 朽ちぬ!」。
──はいはい。たしかジュウザと闘った時のセリフですね、それは。
ご存知のとおり、僕は言葉を使って仕事をしてる人間なんで、言葉を三つ重ねることの大事さを実感し、また利用もしてるんです。単に現代の男の子が脆いんですと言うよりも三つをバン、バン、バン! これ、インパクトがぜんぜん違うんですよ。
──いや~。まさか予備校の先生の授業や講演に影響を与えたとは…。
それこそ、僕の最初の著書の『いつやるか? 今でしょ!(宝島社)』でも2箇所ほど、言葉を三つ重ねる手法を取り入れてますからね。僕は基本的に人の影響をあまり受けないタイプなんですけど、これに関しては完全に北斗が原点ですよね。
──サウザーとラオウの名言が教育の場に役立っている。素晴らしい。
あと、ジュウザ。彼の名言に「我が拳は我流。我流は無型!」っていうのがありますよね? あれ、僕もです。
──我流なんですか?
これは僕の現代文の解き方に近いものがあるんです。僕は参考書とかまったく読んでないんで。
──えっ? そうなんですか?
そうなんです。たまに「先生の解き方はよく分からない」っていう生徒がいるんですけど、結局のところ現代文って言うのは、北斗で例えると相手の拳に対してこっちがどう対応できるかなんです。つまり、解き方じゃないんですよ。だから我が解法は我流。我流は無型なんです。僕は現代文講師としてはジュウザということになるかもしれませんね。
──おお~。なんか、それカッコイイですね。現代文講師、ジュウザ!
でも好きなのはラオウ。言葉を三つ重ねるなら、そこにサウザーが。
──ははは。状況に応じていろんなキャラになるんですね。
かもしれません。ちなみにサウザーで思い出しましたけど、ケンシロウに勝ったじゃないですか。
──あれはビビりましたね~。北斗神拳が通用しない。完膚なきまでに叩きのめされましたよね。
でも、あそこからの回復力って異常に早くなかったですか?
──シュウの叫びで目覚めてサウザーの前に再び立ちはだかる。
ああいうストーリー展開の典型っていうんですかね。ドラゴンボールもそうなんですけど、主人公がどんどん強くなって成長していくじゃないですか。僕はネットで『烈火の炎(※4)』というマンガを解説してるんですけど、その中で、主人公の最終巻の強さから第1巻の強さを引くと、それが主人公の成長分になると言ってるんですね。
【※4】烈火の炎
週刊少年サンデー誌上で1995年~2002年にかけて連載された安西信行による人気マンガ。主人公・花菱烈火とその仲間たちが特殊能力を持つヒロイン・佐古下柳を守る物語で、1997年~1998年にかけてフジテレビ系列でアニメ化もされた。林先生が北斗の拳に次いで名を挙げるほど好きな作品。その解説は必見。
発売元:小学館
──おお~。いいですね、そういう方程式に当てはめる感じ。
結局どんどん強くなるし、仲間も増えていく。ちなみに、いちばん露骨に仲間が増えていったのは『魁!!男塾』だと思うんですけど。
──ここに来て男塾!
あれって、最初は1対1で闘うんだけど、そいつが仲間になる。今度は2対2の闘いになる。2~4~8~16~32という風に、見事に2の倍数で増えていったというね。
──あはは! 男塾、倍数の法則!
そういう例えで言うなら、結局はユリアというひとりの女を取り合ってるワケですから、三角関係になるんですよね。これは『タッチ(※5)』と変わらないんですよね。
【※5】タッチ
週刊少年サンデー誌上で1981年~1986年まで連載された、あだち充の代表的ヒット作。ヒロイン浅倉南の夢を叶えるため野球部のエースとして活躍する上杉和也だったが地区予選決勝に向かう途中に事故死。一卵性双生児の上杉達也がその夢を受け継ぎ幾多の困難を乗り越え甲子園に出場。いまも語り継がれる名作。
発売元:小学館
──あははは! 今度はタッチ!
三角関係のひとりが亡くなるとカップルが成立する…みたいな。構造としては同じですよね?
──そうですね。いままで北斗とタッチが同じ構造だと考えたことは無かったですが、妙に納得です。