北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー

北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー北斗語り北斗語りとは

日本マンガ史にその名を刻む名作「北斗の拳」が2013年、連載開始「30周年」を迎える。
この記念すべき年を意義あるものにすべく、原作の公式親善大使が豪華ゲストを迎えて対談。
これまで語られてきた北斗、語られていない北斗。
北斗に魅せられし者たちが届ける大型新連載、愛深きゆえに行われる。

VOL07ダンテ・カーヴァー

ダンテ・カーヴァー

ダンテ・カーヴァー

VOL07ダンテ・カーヴァー

──分かりました。ちなみに、北斗の拳というのは複雑な人間関係が描かれていますが、どういう風にそれを受け止めていましたか?

とても難しい。ストーリーは、本当に複雑です。そして…哀しいです。

──なるほど。そうですね。涙なくしては読めませんからね。

最初はケンシロウがユリアを奪われます。でもシンは友達でした。友達が友達を傷つけて、そこにいたユリアも傷つきます。とても切ない。

──うんうん。切なさを強く描くのは日本マンガのスタイルですね。

その後も同じです。レイも死ぬ、トキも死ぬ。なんで? アメリカのストーリーの場合でも、キャラクターは死にます。でも、北斗の拳みたいに多くの人は死なない。

──そうか。どちらかと言うとヒーローをヒーローとして徹底的に描く方が主流のような感じですね。

あとは、ラオウです。彼は多くの人を殺しました。だから、嫌いです。

──おおお! ラオウが嫌い。これは貴重な意見ですよ!

自分の道がすべてだと思ってる。普通の人…老人も殺しました。ただ僕が大人になって、少しだけ気持ちが分かるようになりました。ラオウはその方法を選ぶしかなかった。

──そうなんですよ。暴力が支配する世紀末の世界では、恐怖による統治をするしかなかった。でもラオウはその方法で世を統治した後、愛を持つケンシロウに倒されることを望んでいたのではないかと。

はい。でも、まだ嫌い。

──ははは。大人になって気持ちは分かったけど、それでも嫌い。

嫌いです。でも、ケンは大好き。ケンシロウの素晴らしさは、心です。あとはレイ、トキも好き。だからレイが死んだ時は、僕も泣いた。それは感動じゃなくて、本当に悲しい。

──ちなみに、ラオウが嫌いということは、サウザーはどうですか?

サウザー? ダメ。絶対ダメです。

──あら~。そうですか!

ラオウの考えは少し分かる。でもサウザーは分からない。彼は…Tyrant。

──タイ? タイラン?

少し待ってください…(と言いながらスマホの翻訳ソフトに文字を打ち込んで見せる)…コレです。

──ああ! 暴君!

そう。Tyrant。ラオウも人を殺すけど心がある、考える時がある。サウザーはそれが無い。ただ、殺すだけ。

──それは、伝承者になる時に師匠を殺したショックが原因なんですよ?

知っています。でも人を殺しても意味が無い。師匠さんは帰ってこない。

──う~ん。言いにくいですが、僕はサウザーが大好きなんですよ……。

ホントに? 信じられない!

──ええ。そうでしょうね(笑)。それでは、今度はキャラクターではなく、ベストバトル。多くの闘いがありましたが、どれが一番です?

一番? それは…メッチャ難しい。

──あはは。メッチャ難しい。急に鋭い日本語が出てきましたね。

そう。メッチャ難しいです。

──じゃあ、ベスト3!

ベスト3? う~ん。ベスト3…(そう言ってしばらく黙り込む)…。

──かなり悩んでますね。

難しい、本当に難しい。う~ん…まず最初は……レイとユダです。

──おお。それが第3位!

第3位? ダメ。ごめんなさい。順位は後でお願いします。

──あはははは。分かりました。

それから…ケンとラオウのラストファイト。最後の闘い。あと、トキとラオウのラストファイトね。

──オッケー。では、順位を…。

順位は、トキとラオウのラストファイトが1位。2位……2位……。

──大丈夫。時間はあります。

ケンとラオウ…う~ん。ギリギリ!

──ギリギリ?

そうです。トキとラオウ、ケンとラオウは1位、2位、ギリギリ。でもどうしても考えるなら、トキが1位でケンが2位。レイとユダが3位です。

──なるほど。でも、本当は順位じゃなくて、好きな3つにしたい?

それが一番。レイは3位と言ったけど本当に美しい闘いでした。

──飛翔白麗!(※5)。

【※5】飛翔白麗
ユダとの死闘で披露した南斗水鳥拳の究極奥義。足を蹴り上げるようにして空中へ飛び上がり、水鳥のごとき華麗な舞いから相手の両肩に向けて鋭い手刀を振り下ろす。受けた相手は両肩から胸にかけて深く斬り込まれ、致命の重傷を追ってしまう。原作上でユダはあまりの美しさに見とれ、その奥義を無防備のまま受けた。

ひしょう……?

──ダムが破壊され、足まで浸かった水の上に手を当てて空中に飛んだ技です。

そう! 本当に美しい。鳥のように綺麗です。

──日本の子供は全員、学校のプールでマネをしました。そういうことは無かったですか?

同じ。イタリアでも友達みんなマネをしました。でも、ぜんぜんできない。

──ははは。大丈夫。日本でも誰も成功していません(笑)。

必ず、手は沈みます。水の中に。

──そうそう。そのままプールの中に顔ごと入っていきますね。

そのとおり(笑)。じゃあ、アナタのベスト3を教えてください。

──お~。質問返し! じゃあ順位は後にしますけど(笑)、ケンシロウとラオウのラストファイト、トキとラオウのラストファイト。

僕と同じね。あとひとつは?

──あとひとつ…。う~ん。サウザーとケンシロウの闘い?

やっぱり! サウザーですね!

──ははははははは!