北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー

北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー北斗語り北斗語りとは

日本マンガ史にその名を刻む名作「北斗の拳」が2013年、連載開始「30周年」を迎える。
この記念すべき年を意義あるものにすべく、原作の公式親善大使が豪華ゲストを迎えて対談。
これまで語られてきた北斗、語られていない北斗。
北斗に魅せられし者たちが届ける大型新連載、愛深きゆえに行われる。

千葉繁

千葉繁

VOL13千葉繁

我らが北斗の拳が「31年目」を迎える2014年初の『北斗語り』。今回の語り相手は北斗を…いや「北斗の声」を語る上で欠かすことのできない声優の千葉繁さん(※1)。アニメ版の北斗で数々のザコキャラを演じ次週予告などでもファンを楽しませてくれた千葉さんの神髄に迫る。

【※1】千葉繁
1954年2月4日、熊本県菊池市に生まれる。甲高く個性的な声、変声前や変声後の役も演じ分けることができ、脇役を演じても聞いた者が忘れられないほどの印象を残すことで知られる。現在はナレーションなどでその声を聞くことも多くテレビ界にもアニメ界にも必要不可欠な存在に。大のアドリブ好きとしても有名。

──ガル憎(以下略)それでは本日は宜しくお願い致します。

千葉繁(以下略)はい。よろしく!

──早速ですが、千葉さんと言えばアニメ版の北斗で様々なザコキャラを演じられ、さらに個性的な次週予告も有名だったりしますが、原作には無いオリジナルキャラ、南斗聖拳のジョーカー(※2)などもやられていますよね? 本当に幅広いです。

【※2】ジョーカー
KING(シン)の副官。鳥の脚に掴まって飛行、瞬間移動のような移動術を駆使するなどしてシン配下の軍閥や軍団を操りケンシロウを追い詰めたオリジナルキャラ。ケンシロウとの闘いで「南斗翔天拳」を披露するも敗北。しかし命乞いすることなく死を選び、最後までシンへの忠誠心を見せ、シンからも厚い信頼を受けていた。

いや~。北斗では本当、いろいろやってますね。当時って、たしか午前中にクリィミーマミ(※3)を録ってそこから新宿の大久保まで移動して北斗を録って、それが終わると別のスタジオに移動して奇面組(※4)を録っていたんですよね。

【※3】クリィミーマミ
1983年7月1日から1984年6月29日まで、日本テレビ系列などで放送された大人気テレビアニメで、正式タイトルは「魔法の天使クリィミーマミ」。前年放送の「魔法のプリンセスミンキーモモ」に続く魔法少女物として「はずんでクリィミーマミ」というタイトルで企画され、名門スタジオぴえろの制作により放送された。


【※4】奇面組
集英社「週刊少年ジャンプ」で1982年4月~1987年7月まで連載された人気漫画のアニメ版で、1985年10月12日から1987年9月26日まで、フジテレビ系列でオンエアされた。正式タイトルは「ハイスクール!奇面組」で千葉氏は主人公の一堂零を演じた。北斗の拳と同じく、ジャンプの黄金時代を支えた不朽の名作だ。

──ええっ!? そんなハードスケジュールだったんですか?

そうですね。北斗で叫びまくって移動の合間に四ツ谷の駅で立ち食いそばを食べて。とにかく食事する時間も無いくらいハードでしたよ。

──普通の仕事でもキツいのに、声を出し続けてそのスケジュールですもんね。ほとんど超人ワザですね。

中でも北斗は激しいし、いろんな役をやっていたので。さっきジョーカーの名前が出ましたけど、ザコ…ザコという表現は失礼なんだけど 僕はそこへの想いが強いかな。

──たしかに千葉さんのイメージはザコキャラですもんね。不思議と愛着が湧いてくる感じですか?

いや。そうじゃなくて、ザコにもそれぞれの人生があるわけですよ、名も知れぬ男たちだけどね。

──なるほど! そういう意味での想いですか。それは深いですね。

たまたま就職しちゃったところがとんでもないところだっただけでね。

──あはは。就職。たとえば拳王軍だったり聖帝軍だったり。

そう。ザコキャラと呼ばれる人たちにだって、お父さんもお母さんもいるんですよ。糖尿病の爺ちゃんもいりゃ生まれたばかりの子供も、中にはこの闘いが終わったら結婚するぞっていう人も。そこには人数分の人生があって、それがあの壮大な兄弟ゲンカに巻き込まれてみんな死んでいっちゃうわけですから。

──あ~。なるほど~。ザコ側からの目線で見るとそうですね。世界最大級の兄弟ゲンカに巻き込まれる。

だから、僕からするとケンシロウもラオウもカッコイイと思わないんですよね。ふたりの兄弟ゲンカが原因でどれだけの人が死んだか。だから僕たちは声に…名もなき男たちの最後の代弁者の気持ちでね。

──原作でも描かれていない彼らに愛着が出てくるんですね。なんていうかこう…胸が熱くなります。

愛着が出てくるから、みんな取り合って殺られ役を演ってました。多い時には、ひとりで10役くらい。

──そんなに多くやるんですか?

高い声を出したり低い声を出したり厚みのある声を出したりね。

──でも、原作と決定的に違うのはそこですよね。原作だと悪そうなザコが並んで、こっちを睨んでる。アニメだと声が必要になってくる。

そこに命があるんです。メインキャラクターというのは背景や関係性などが緻密に描かれていたりするんですけど、それ以外のキャラは描き込まれていないわけですよね。見た目はモヒカンだったり刺青を入れていたりしてるんだけど、粋がってるんですよ、あれは。本当に強いんだったら立っていればいいんだから。