北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー

北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー北斗語り北斗語りとは

日本マンガ史にその名を刻む名作「北斗の拳」が2013年、連載開始「30周年」を迎える。
この記念すべき年を意義あるものにすべく、原作の公式親善大使が豪華ゲストを迎えて対談。
これまで語られてきた北斗、語られていない北斗。
北斗に魅せられし者たちが届ける大型新連載、愛深きゆえに行われる。

若杉公徳

若杉公徳

VOL04若杉公徳

 北斗の拳30周年に花を添えるべく自ら立ち上げた当連載。ふと気づけば今回で4回目。すべては対談を快諾してくださる著名人…いわば「北斗の子」の皆さんのお陰であり、同様に北斗の子である私もまた、北斗を愛する皆さんの期待や想いに真剣に応えようと、全霊の拳を文字に込めて執筆を続けている。
そんな中で迎えた今回の対談相手は若杉公徳先生(※1)。代表作は言わずと知れたDMCこと「デトロイト・メタル・シティ」なのだが、今回この北斗語りに出ていただく要因となったのは、DMCではなく「ヤングアニマル(白泉社)」で好評連載中のマンガ「KAPPEI(※2)」。あえて分かりやすい表現をさせていただくならば、完全に北斗。見事なまでのギャグ北斗。ケンシロウを彷彿とさせるスギちゃんスタイルの主人公の恋愛物語なのである。北斗を模したギャグマンガを描こうとしたその狙いは? いざ、北斗語り。

【※1】若杉公徳
大分県出身。大学時代から本格的に漫画家を目指すようになり「ヤングマガジン(講談社)」に投稿した作品が佳作を受賞。5年間のアシスタント経験を経た後に「ヤングマガジンアッパーズ」で初連載『アマレスけんちゃん』を開始。同氏の代表作の『デトロイト・メタル・シティ』は実写映画化され、一躍その名を世に知らしめた。


【※2】KAPPEI
1999年7の月。ノストラダムスが予言した終末の人類の救世主となるべく「無戒殺風拳(むかいさっぷうけん)」を学ぶ男たち。しかし、人類は滅亡するどころか平和なまま。行き場を失ったかのごとく現代社会でギャップと苦しみながら恋愛を謳歌するギャグマンガ。単行本の表紙は白泉社の少女コミックを意図的に模している。

 

ガル憎(以下略)──それでは本日はよろしくお願いします。

若杉公徳(以下略)こちらこそ。

──早速ですが「KAPPEI」のコンセプトと言いますか…。キャラクターもストーリーも、いわゆる「北斗ありき」の設定ですよね?

そうですね。終末(※北斗の拳で言う世紀末)に備えて拳法を特訓してきた人がいて、もし終末が来なかったらどうなるかをギャグマンガにしたら面白いかなと思いまして。打ち合わせ中に「ハチクロのメンバーにケンシロウがいたら面白いなあ」とか言ってたんですよ、みんなで。

──あはは。ハチクロ(※3)。個人的には得意な分野では無いですが、言いたいことは分かります。

【※3】ハチミツとクローバー
羽海野チカ作画の恋愛マンガで2000年から2006年まで「CUTiE Comic」と「ヤングユー」と「コーラス」の三誌に渡って連載。2003年には第27回講談社漫画賞少女部門を受賞。さらにはテレビアニメ化、実写映画化、ドラマ化など、多方面で爆発的ヒットを記録した名作。

そういうギャップ的な面白さはどうだろうと。

──単行本の1巻の帯に「原哲夫、大激怒?」とありますが(※4)。

【※4】単行本第1巻の帯
「KAPPEI」単行本、1巻の帯が左。もしかして怒っているのでは…というコミカルな手法で原先生が協力。さらにそれを助長するかのごとく拳を握りしめたケンシロウまで協力。これがひとつの流れとなり、2巻では「ふたりエッチ」の克・亜樹氏、3巻ではお笑い芸人のスギちゃんが協力。今後の協力者にも期待。

連載を始めるにあたり、さすがにこれは許可が必要だろうと。1話目のネーム(※下書き)が完成した時点で原先生側にお送りして。

──え? つまり事前に「こういうマンガを描いていいですか?」ではなくて、実際に動き始めてから確認されたということですか?

そうですね。そもそも原作の大ファンですし、ストーリーにも北斗の流れが出てきますから。そうしたら運良く原先生側からNGが出なくて。

──運良く…。ネームまで進めてNGだったらどうしたんですか?

ダメって言われたらナシですよね。

──ナシと言いますと。

「KAPPEI」。ナシです。

──おおおお! じゃあ、かなり大きな賭けに出たワケですね。

そうですね。そう言われると、そうかもしれませんね。

──いや、完全にそうですよ! ただ逆を言えば、そのやり方が功を奏したという考え方も…。もし企画段階での話なら「ダメ!」のひと言で終わらせることも容易というか。

あ~。なるほど。

──企画段階じゃなく、企画としては通っていて、すでにネームも仕上がってる。原先生も同じ漫画家なワケですから、たとえば「ネームまで仕上がってるなら…まあいいか」となるかもしれないじゃないですか。

はははは。でも、本当に描けることになって、とにかく勢いで描いたんですけど、やっぱり「原先生が怒ったらショックだな」というのがあったんですよね。なんか、自分の気持ちの中に。

──ええ。もし僕が同じ立場でもそうなります。でも、最終的には自らの単行本の帯にケンシロウが。

あれはもう、めちゃめちゃ嬉しかったです。許可が出ただけでも充分に嬉しかったんですけど、まさか帯まで協力いただけるとは。